• マーク・ケイ

会いに来る少女

私は家庭の事情により3歳頃からしばらくの間、熊本県の南端にある周囲を九州山地に囲まれた片田舎に住む親戚の家に預けられていました。


村を貫くように通っている県道は昼なお暗く、両サイドは深い森、数十メートルおきに民家や、牛舎などが点在する、まるでトトロの森のような風情です。




私が預けられていた親戚の家は、田舎にある典型的な古民家。


薪で焚く五右衛門風呂や土間、蔵などがあり、トイレは母屋から30mほど離れた小川の脇にありました。


私はまだ幼いので、夜中にトイレに行くのが怖く、寝ている家人を起こすのも気が引けるので、夜が来るのがたまらなく嫌で仕方なかったのを覚えています。





しかし唯一、楽しみにしていることがありました。


夏の夜は縁側で過ごすことが多かったのですが、この縁側にいるときまって小川のあたりから小袖を着た女の子が姿を現し、母屋の縁側にいる私の元へ笑顔で駆け寄ってくるのです。


年の頃なら私よりも2、3歳年上でしょうか。


親戚の家は、老夫婦とその息子(既に成人)しか住んでおらず、周囲でも子供の姿を見たことがありませんでしたので、私は同じ年頃の子供と会えることを単純に喜んでいました。昼間は会ったことがないけれど、きっとこの近所に住んでいる女の子だろうと思っていました。


不思議なのはこの女の子、全く話をしないんです。ただ、縁側に座っている私に笑みを投げかけているだけ。それもとても楽しそうに笑っています。


あまりに楽しそうに笑うので、一緒に遊びたくて縁側から飛び降りようとしましたが、その度に家人に「夜中に外に出てはダメ!」と叱られます。


「おねえちゃん、おねえちゃん」と指を指しますが、家人はどうやらこの小袖姿の女の子が見えていない様子なのです。


実は、あまりにその女の子が毎夜、私の元を訪れるので、昼間にどうしても会いたいと思い、女の子を探し回ったことがありました。





女の子はいつも小川から姿を現わすので、きっと小川の向こうにある農家に住んでいる子か、その周辺の民家に住んでいる子だろうと、子供ながらに目星を付けていたのです。


昼間にこっそりと家を抜け出し、小川に架かる小さな橋を渡り、農家を訪ねました。出て来た農家のおばさんに、こんな言葉を言ったのを覚えています。


「女の子のお友達はいませんか?」


すると、このような返事が。


「えっ、お友達?ごめんね、うちには子供はいないんだよ」


それでも諦められない私は、そこからさらに離れた民家を訪ねてさらに...


「女の子のお友達はいませんか?」


「あら坊や、どこから来たの?この辺に坊やくらいの年の子供はいないね〜」


その言葉を聞いて、私は泣きながら帰路につきました。


帰ると親戚の老夫婦が、心配して私のことを探していたようで、大変叱られました。


「何をしてたんだい、1人で出かけたら危ないよ!」


「お友達を探してたの...」


それを聞いて2人は絶句したように黙ってしまいました。





それからしばらくすると、私を父が引き取りに来て、家族で暮らせるようになりました。小学校に上がってからも、何度かこの懐かしい親戚の老夫婦の元を尋ねることがありました。


親戚が集まるときまって、私が「お友達はいませんか?」と尋ね歩いたあの時のことが話題のぼり、あの私の行動は「友達が欲しいばかりに取った、いじらしく可愛気のある子供らしい行動」...だと思われています。


友達欲しさに闇雲に探し歩いていたのではなく、毎夜私に会いに来ていた「小袖を着て笑みを投げかける、あの少女」を探していたということは、誰も知りません。


かなり後になって知ったのですが、私が住んでいた親戚の家の前に流れていた小川は普段は流れの緩やかな水量の多くない綺麗な川なのですが、大雨になると激流になり氾濫することもあったそうです。大昔には、何人もの子供が溺れて亡くなっているというのです。。


実は、この親戚の家に預けられている時、私は大変疎まれる存在でした。老夫婦は子供嫌いで、きつく当たられることがよくありました。


私が夜にいつも縁側にいたのは、心の中で助けを求めていたからです。


「早く、おうちに帰りたいよ!」


「お父さん、早く迎えに来て!」


「お友達が欲しいよ!」


いつもそんなことを思って、縁側でグズって泣いていました。


あの小袖姿の女の子は、そんな私を慰めに来てくれていたのでしょうか。私と一緒に遊びたかったのでしょうか、それとも私を小川へ連れ出そうとしていたのでしょうか。


あの女の子のことを思い出す度に、心に温かさと悲しさの両方が湧き上がって来るのです。

12/31/2018

鑑定のご案内

03/05/2019

ブログ 更新

Please reload

上の項目への遷移はメニュー表示からも可能です。

Copyright © 2010 ELEMENTAL WORKS All Rights Reserved.

魂の陰陽占術師
  • w-facebook
  • Twitter Clean
  • w-flickr

​本サイトはSSL暗号化通信

により保護されています。

This site was designed with the
.com
website builder. Create your website today.
Start Now